- 2012年11月22日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:シリア
- トピック:変革を求める中東・北アフリカ
シリア政府の爆撃により、殺害された男の子。(C)AI
シリアの反体制派の新指導部は、反政府軍による国際人道法(IHL)違反を監視し、違反の防止に努めなければならない。
アムネスティは、新しく設立されたシリア国民連合と、亡命中の主要反政府グループのシリア国民評議会(SNC)の新たな指導者に対し、武装反政府グループの行動を監視する実効的な監督体制を設立し、これ以上戦争犯罪等の人権侵害を起こさないよう、強く要請する。
大部分の人権侵害は、政府軍と準軍事的民兵による。とくに国際的に禁止されているクラスター爆弾を含む無差別空爆と、砲撃での一般市民への攻撃が増えている。シリア政府はこれらの攻撃を即刻停止させなければならない。
指揮官らの責任者が戦争犯罪等の国際人道法違反を防げなかったとき、彼らは刑事責任を問われるであろう。また両陣営の兵士たちには、「ただ命令に従っただけ」という言い逃れはできず、その行動の責任を問われることを知らしめるべきだ。
犠牲になる市民
一般市民は依然として戦闘の危険にさらされている。とくにシリア軍が、人口の密集した住宅地に無差別空爆や砲撃を行っている。そもそも無差別性のクラスター爆弾等の国際的に禁止されている武器を使用しているためである。
一方、反政府軍は、最近政府軍陣地から大量の重火器を押収し、しばしばこれらの武器を無謀なやり方で使用し、住民を危険にさらしている。
悪化する戦闘で難民は窮地におかれている。難民高等弁務官事務所(UNHCR)は11月9日、24時間で戦闘から逃れた約1万1000のシリア人が避難先をもとめて近隣諸国に殺到していると発表した。
国外に逃れた30万以上のシリア人に加えて、100万をはるかに超える人々が戦闘のために自宅を追われてもシリア国内にとどまり、多くは人道的に最悪の状況におかれている。
大規模で収まらない自宅退去は、反政府軍の新指導者が直面する大きな問題だ。彼らはシリア政府が依然として続ける弾圧措置に対する蜂起への国際社会の支援を要請している。アムネスティは、新しい指導者が、反政府軍による人権侵害をこれ以上容認しないことを言葉と行動で示すよう求めている。
武装グループによる人権侵害
ここ数ヵ月、シリア全土の武装反体制グループは、自由シリア軍に関係かしないかに関わらず、捕虜の違法な殺害など、重大な人権侵害や潜在的な戦争犯罪に関わることが増え、非難されている。
シリアの反政府軍の新指導部は、監視機能をつくり、指揮下の武装グループによる人権侵害を防止しなければならない。これには、有効な命令系統を作り、捕えた市民を保護するために必要な警告を与えることなど、兵士たちにIHLの遵守が彼らの義務であることをはっきり認識させることが含まれる。これによりIHLの義務遵守が強化される。
シリア政府による違反行為
これまでのところ、武力紛争中に一般市民が死亡するおもな原因は、シリア軍が人口が密集する住宅地域に無差別空爆や砲撃を容赦なく行ってきたことによる
政府軍はまた戦力拡大のため、反政府軍の支配下にある町や村で、国際的に禁止されているクラスター爆弾を使用するようになった。
このような攻撃は戦争犯罪であり、シリア国内で人々が余儀なく自宅退去する数を劇的に増加させるとともに、難民危機を悪化させている。
シリア軍は、空爆とともにクラスター爆弾などの禁止された武器を既成市街地に使用して、多数の一般市民を違法に殺傷し、家やインフラを破壊し、増加し続ける難民危機を悪化させている。
アムネスティは、紛争から避難して来るすべての難民に門戸を開放し、彼らが即刻安全を確保できるように、シリア隣国に繰り返し要請する。またEU諸国には、さらなる努力で難民受入れの責任を分担し、シリア隣国の負担を軽減するよう強く求める
2011年初めシリアで騒乱が始まって以来、アムネスティが国連安保理に繰り返し要請しているのは、シリアの状況を国際刑事裁判所に委託し、バシャル・アル‐アサド大統領と政府高官の財産を凍結し、ロシアなど数カ国がシリアへ武器を流さないよう求めることである。
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『無差別攻撃にさらされる市民たち~シリアからの現地レポート~』
『市民の命が、どれだけ奪われればよいのか~シリア・アレッポで激化する戦闘~』
アムネスティ国際配信ニュース
2012年11月14日
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