- 2012年11月13日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:国際人権法
ASEANの現状の人権宣言の草稿は、国際的な人権基準を満たしておらず、ASEAN地域に低水準な人権擁護システムをもたらす危険性がある。主要な国際人権団体らは、本日ASEAN首脳国に送った手紙の中でこのように述べ、ASEAN人権宣言の採択を延期するよう求めた。
とくに懸念されているのは、同宣言の一般原則だ。現草稿の一般原則第6,7および8条によると、人権は「義務の履行に見合って」、また「国家および地域の状況」や「異なる文化・地域・歴史的な背景」に応じて与えられるとされている。
また、同草稿で宣言されたすべての権利が、「国家安全保障」や「公衆道徳」といった、広範囲にわたる理由で制限される可能性がある。
「いかなる人権も、各自の義務に『応じて』与えられるとするという条項は、1948年の世界人権宣言および、1993年のウィーン宣言および行動計画で採択された、人権の概念そのものに反するものです。1948年の世界人権宣言は、ASEAN諸国も含むすべての国家が賛同しています」と、国際法律家委員会のワイルダー・テイラー氏は述べた。「人権と義務を天秤にかけるのは、人権の概念を根底から覆すものです」
さらに、国際法は、広範囲にわたる人権について、国家がいかなる状況においても制限を課すことを禁止している。ただし、一部の権利についてのみ、一定の条件化で、特定の、限定的、はっきりと定義された制限を認めることがある。そして、国際法はすべてのASEAN諸国に、各国の政治・経済システムや文化に関わらず、すべての人権と基本的自由を守ることを強く求めている。
「現在の人権宣言の草稿が、欧州や南北アメリカ、アフリカ諸国の人権文書をはじめとする、現行の国際人権法や人権基準から、著しくかけ離れていることは明らかです」と、国際人権連盟(FIDH)のスヘイル・ベルハッサン議長は述べている。
草稿が大幅に修正されない限り、ASEANは2012年中にこの人権宣言を採択し、各加盟国では人権擁護を深めるどころか、さらなる人権侵害が許されることになる。
各人権擁護団体は、ASEAN首脳に、人権宣言草稿をASEAN政府間人権委員会に差し戻し、草稿の書き直しを明確に指示することを、強く要請した。草稿書き直しの指示は、国際人権法と人権基準を満たすべく、透明で慎重かつ包括的な手順を踏み、すべての利害関係者と十分に協議した上で明示されなければならない。
アムネスティ国際配信ニュース
2012年11月4日