- 2012年11月 1日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:シリア
- トピック:難民と移民
シリアの難民キャンプに暮らす少年(C) AFP/Getty Images
「子どもたちが流した血は、国連の大きな汚点である」。英国のデヴィッド・キャメロン首相は9月26日、国連総会でこのように述べ、シリア紛争で国連が行動を起こさないことを強く批判した。
シリアでの人権の危機は、EUにとっての重大な試金石である。ノーベル平和賞を受けたEUとその加盟国にとっては、シリアからの難民の安全を保障する断固とした行動をとり、その評価にふさわしいことを示すよい機会である。
機能不全に陥った国連安保理
しかし、高まる非難にも関わらず、EUを含む国際社会はこれまでのところ、シリア紛争の各党派に、拡大する人権と人道法の侵害を止めるための効果的な圧力をかけるに至っていない。
当初改革を求める平和的抗議行動が起こり、それが残虐な弾圧にあい、内戦に発展した。それから19ヵ月が経った。しかし、国連安全保障理事会はロシアと中国の拒否権と他の加盟国の無為により、いまだに機能が麻痺したままである。
そして国際社会が躊躇しているあいだに、多くの子供を含む市民の犠牲者は増え続けている。
推定では紛争が始まってから、2万4000人をゆうに超える人びとが亡くなった。それに加え、シリア内で百万人以上が家を追われた。
35万人以上が、隣国のトルコ、レバノン、ヨルダン、イラクに難民としてすでに登録したか、登録を待っている。
国連は、今年の終わりまでに70万人がシリアの隣国に難民となって避難するだろうと予測している。一方、EUは1万6500人のシリア難民しか受け入れていない。
トルコ、レバノン、ヨルダン、イラクは、概して大量の難民を受け入れ、国内にとどまることを許可した。しかし、紛争が激化するにつれ国境を越える人数が急増している。そのため、国際社会が断固とした行動を取り、難民を受け入れている国々と責任を分かち合うことが不可避となった。
もし各国がシリア市民の命運を真摯に考えるならば、安全を求めて逃げざるを得なかった人びとのことも当然、同様に考えるはずである。彼らを支援し守ることは、国際社会が出来る最低限のことである。
EUは、ただちにアクションを
このため、アムネスティはEUと加盟国に対し、シリア難民を支援する現実的な手段を講じるように訴えている。
アムネスティはEUに対し、以下の具体的な手段を提案する。
- EU内に入ったすべてのシリア避難民に対し、保護と公平な難民手続きを保障すること
- シリアの状況が安定し、安全が確実になるまで、だれもシリアに戻されることがないよう保障すること
- 難民申請を判断するに際しEU内で共通の基準を設けること
- 国際的保護の解釈を拡大して適用すること
- 安全な地へ逃れるのを阻む、ビザや非常に煩雑な家族再統合手続きなどの障害を取り除くこと
国際社会は、手を差し伸べるべき
シリアはいまだイラクやパレスチナ、ソマリア、アフガニスタン、スーダン、イエメンからの難民を大量に受け入れている。アムネスティは、EU加盟国もまたシリアからの難民を受け入れ、責任を分かち合い連帯責任を負うように求めている。
イラク以外の国からの難民は、書類の不備や外国人とわかる風貌への不安で、ますます安全を脅かされている。
国連難民高等弁務官事務所は、これらの難民に移住先を提供するよう各国に訴えており、アムネスティはEU各国にこの訴えに寛大に応じるよう求めている
ヨーロッパの国々もほかの支援国も、国連シリア地域対応計画に惜しまず寄付をするべきである。国連とそのパートナー組織は、シリア難民支援のため4億8790万USドルの寄付を必要としている。今までのところ、資金はその29%しか集まっていない。
難民の急増と冬の到来は、隣国での難民たちの状況をさらに厳しくするだろう。
国際社会は、人道的支援の訴えに緊急に応えなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2012年10月24日
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