- 2012年10月15日
- 国・地域:米国
- トピック:死刑廃止
10代で犯した罪で死刑に直面するアンソニー・ヘインス(c)AI
アフリカ系米国人が、19歳のときに犯した罪で10月18日に死刑を執行される予定である。テキサス州の恩赦仮釈放委員会およびリック・ペリー州知事は、彼に恩赦を与えるべきだ。
アンソニー・ヘインス(33歳)は1998年、ヒューストンで当時非番のキンケイド警察官(白人)を射殺し、翌年死刑判決を受けた。
この事件については人種差別、不十分な証言、さらに司法および検察側の不正行為が指摘されている。
ヘインスに死刑判決を下すには、彼がたとえ刑務所に収監されていたとしても、社会的に脅威であることに変わりはない、ということを検察側が陪審員を納得させなければならなかった。彼には前科がないため、州のこの主張は根拠が薄かった。しかし、弁護人が刑の軽減に必要な確かな証拠を陪審員に示せなかったことで助けられた。
テキサス州の死刑の風土では、恩赦は非常にまれである。しかし、今回は、死刑制度の熱心な支持者たちでさえも、彼らを代表する州政府による「殺人」にためらうもう一つの事例だ。
アムネスティ・インターナショナルは、テキサス州仮釈放委員会に手紙を書き、この事例についてのレポートを提出した。
裁判が開始されて以来、40人前後の人びとが法廷で誓約書に署名し、次のように述べている。「私が知るこの若者は、粗暴なところはなく、礼儀を重んじ、このような事件を起こすということは考えられない、と証言する用意がある」
同様に陪審員は銃撃の二日前、ヘインスが「スピード」と呼ばれる覚醒剤を摂取していた事実や、その影響についての一切の情報を知らされなかった。また、彼は精神状態に問題を抱えていたこと、あるいは死刑囚が若年である場合の刑の軽減について、専門家の証言機会はなかった。検察官は陪審員に対し、「いかなる減刑の要請もなく、危害を及ぼすな悪人に減刑は値しい」と主張することができた。
ヘインスは模範囚であり、キンケイド巡査部長の死に強い自責の念をずっと表してきたという。
弁護士は9月24日、連邦裁判所に死刑執行の停止を求め請願書を提出した。これを除けば、ヘインスの上告への道は閉ざされている。
連邦上訴裁判所は2009年、陪審員選出に人種差別があったとする主張に基づき、ヘインスは新らたに公判を受けるべきであるという判断を下した。当初の公判で、陪審員のうち1人だけがヘインスと同じアフリカ系アメリカ人だった。それというのも検察官が、6人中4人の黒人陪審員候補を却下したからだ。
しかし、最高裁は上告裁判所の決定を「重要な意味を持つ」としながらも、これを覆した。
司法の違法行為も手続きに汚点を残した。陪審員選出の過程を監督した裁判官は、陪審員に開示されるはずの2丁の銃を清掃してしまった。この裁判官はのちに、州の司法判断審査委員会で懲戒を受けたが、ヘインスの死刑判決は変わらなかった。
恩赦請願人には、父親も含まれている。ヒューストン消防署を定年退職した父親は、次のように話している。「息子が死刑執行されれば、私の人生に計り知れない影響を与えます。アンソニーは一人息子です。執行で、私が生きていく目的もなくなってしまう。皆さんに息子の命を助けていただきたいのです。なぜなら、10代で下した判断は、大人の判断ではないからです。息子は心を改め、キンケイド巡査部長の命を奪ったことを深く後悔しています」
ヘインスを裁いた裁判所があるテキサスのハリス郡では、死刑囚のうち100人以上が刑の執行を受けた。
米国が1977年に死刑を再開して以来、テキサスでは486人が執行を受けた。そのうち4分の1近くの116人がハリス郡で有罪が確定した者だ。116人という執行数は、他の州と比較しても2番目という突出した数だ。テキサスで死刑執行を受けた486人のうち70人以上が犯行当時17歳から19歳、約70人中40人が黒人、さらにその40人中、28人はその被害者が白人だった。今年すでに執行された全米30件のうち、9件がテキサスだ。
アムネスティは、いかなる状況においても死刑に反対する。
アムネスティ日本
2012年10月11日
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