- 2012年10月12日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:中国
- トピック:強制立ち退き
中国では、暴力をともなう強制立ち退きが横行している。© Benjamin gz - Imaginechina
中国では、地方政府が巨額の借金の穴埋めに住民の土地を没収し、その土地を怪しい取引で不動産開発業者に売却する手法がはびこっている。その結果、暴力が伴う強制立ち退きが増加している。政府は直ちに必要な対応を取るべきだ。
アムネスティ・インターナショナルは10月11日、強制立ち退きの現地調査をまとめた報告書を発表した。その中でアムネスティは、中国で過去2年間、積年の不満の原因である土地開発に伴う強制立ち退きが、いかに著しく増加しているかを明らかにしている。
人権を奪う土地再開発
地方政府は、景気刺激対策事業の資金調達のために国営銀行から巨額の資金を借り、その返済を土地の販売に依存している。
その結果、全国の都市および農村で、自宅から立ち退きを強制された住民の多くが、死亡、殴打、嫌がらせ、留置の被害を被っている。
絶望のあまり、最後の抗議手段として焼身自殺を図る人びともいる。
しかし、中国を牛耳る共産党は、手段を問わず経済成長に貢献した地方の役人を、今もなお昇進させている。土地再開発は、新設された道路・工場・住宅団地はそのいずれも、払った犠牲を問わず、最も明快な、目に見える成果と見なされる。
中国政府は、ただちに強制立ち退きを中止しなければならない。地方役人が違法な業務の執行を奨励する政治的報償、税務利益、昇進は、止めるべきだ。
果敢に立ち上がり、報復をうける住民たち
アムネスティが調査した強制立ち退きの事例40件のうちの9件で、立ち退きに抗議あるいは抵抗した住民が死亡している。
湖北省武漢市に住む王翠雲(70歳の女性)は2010年3月3日、30~40人の作業員の一団が自宅を取り崩しているとき、抵抗しているうちに掘削機で掘った穴に生き埋めにされた。引き上げたときには、息絶えていた。
地方政府の役人は、住民を自宅から追い出し、土地使用権を売却させるために、開発業者が冷酷な手段での嫌がらせをすることを許可もしくは黙認してきた。
適切な代替住宅だけでなく、国際法が要求する妥当な協議あるいは通知すらほとんどなく、補償金も本来の市場価格をはるかに下回る。
住民は、水道や暖房などの基本サービスを打ち切るなど組織的作戦の被害を受ける。土地取引に反対する公務員は、しばしば報復を受ける。
地方政府と業者は頻繁に暴力団を雇い、鋼棒やナイフを使って住民に暴力をふるわせる。アムネスティの調査で、警察がこれらの犯罪の調査をめったに行わないことが分かった。中国の居住権活動家、弁護士、学者たちも、うなずく結果だった。
赤ん坊を人質にとる警察
とくに大がかりな暴行の例は、2011年4月18日、江蘇省李場村で起こった。数百人の男たちが農民たちを襲い、村から追い出した。さらに20人余りの女性を連行し、殴打した。
四川省文昌市の警察は昨年6月21日、卑劣にも生後20カ月の赤ん坊を人質にとり、母親に立ち退き命令の署名をさせた。
強制立ち退きに抵抗する人びとは、しばしば留置されるか、「労働教養(RTL)」に収容される。
山東省政府は、強制立ち退きの犠牲者である李紅衛を、「昨年5月に広場で2回の抗議演説をした」として、21カ月間の「労働教養(RTL)」拘禁を命じた。
江西省河下地区では、昨年5月17日、一人の女性が立ち退き停止の請願を役所に出したため、殴打され、不妊手術を受けさせられた。拷問行為である。同行していた住民も殴られた。
公正な司法判断を得る望みは、ほとんどない
中国の裁判所に独立性がないため、立ち退きに立ち向かう人びとや救済を求める人びとが公正な司法判断を得る望みはほとんどない。弁護士たちもまた、報復を恐れて、依頼の引き受けに躊躇している。
司法への道が閉ざされているため、暴力に訴える人もいれば、焼身自殺という最終手段に訴える人もいる。
2009年から2011年の間だけでも、強制立ち退きで41件の焼身自殺の報告がある。それ以前の10年間の10件と比べ、はるかに多い。
行われ続ける強制立ち退き
強制立ち退きは、中国民衆の最大の不満の一つである。
温家宝は状況の重大さを認識していて、国際法と国際基準に沿って、強制立ち退きに反対する人びとの権利を保護するいくつかの進展があった。
2011年、住宅所有者への補償は市場価格を下回らないこと、および暴力の行使は違法である、とする新しい規制が初めて採択された。
しかしながら、これらの法令は、本来あるべき基準に遠く及ばず、しかも都市住民にしか適用されない。
農村、とくに都市部に近い地域では、依然として強制立ち退きに対する保護策が脆弱である。周囲の都市化があまりに早く起こり、補償が市場価格ではなく農地価格に基づく。その結果、農民はしばしば、生来住んできた地域を出る対価は、不当に低い。
新規規制のもう一つの弱点は、それが土地所有者の保護のみで、借家人の権利を見落としていることである。
強制立ち退き(個人、家族、地域社会が、彼らの使用している家や土地から自分たちの意思に反して転居させられ、法的保護を利用できない)は、国際法のもとに禁止されている。
政府は、すべての強制立ち退きを直ちに中止すべき
アムネスティは、すべての強制立ち退きを直ちに中止し、国際法に沿って適切な保護を確実に実施するよう、政府に要求している。
アムネスティの要求は、以下のとおりである。
- すべての人ひとに土地保有権を保障し、強制立ち退きや他の脅迫や嫌がらせから保護する実効的な対策を実施すること
- 強制立ち退きの結果ホームレスになる人があってはならず、自身で用意することのできない人にはすべて適切な代替住宅を提供すること
- 強制立ち退きの犠牲者はすべて、その不服申し立てに、独立的、公平な裁定が与えられ、実効的な救済を得られるようにすること
- 立ち退きの過程で暴力を使用したものを罰し、起訴すること
アムネスティ国際配信ニュース
2012年10月11日
報告書
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