- 2012年8月20日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ロシア連邦
- トピック:危機にある個人
「プッシ―・ライオット」裁判は、表現の自由、教会の立場、裁判所の独立性に 関する議論を呼んでいる。©NATALIA KOLESNIKOVA/AFP/GettyImages
ロシアの裁判所は8月17日、パンクロックグループ、「プッシー・ライオット」のメンバーに有罪判決を下した。これにより同国の言論の自由は大きな打撃を受ける。
メンバーのうちマリア・アリョーヒナ、ナジェージダ・トロコンニコワ、エカテリーナ・サムツェビッチの3人は今年2月、モスクワのロシア正教会の首座聖堂で政府を批判する歌を歌ったとして、「宗教的嫌悪によるフーリガン行為」で逮捕され、起訴された。
裁判所は、拘禁2年の判決を下した。3人の弁護士らは控訴すると述べた。
アムネスティ・インターナショナルは、3人の裁判には政治的思惑があり、たとえ侮辱的要素があったとしても、この抗議行動は合法的であり、起訴は不当だと考える。また、いずれも平和的に自分の考えを表現したというだけで拘束された良心の囚人だ。
当局は今回の判決を覆し、全員を即時、無条件に釈放すべきだ。
今回の行動は世間の耳目を集めるためにとったもので、実際、多くの注目を集めた。しかし、ロシアは2年の拘禁刑を下すことで、言論の自由に誤った形の制限をすることとなった。
当局は、最近の議会や大統領選挙に関わる一連の抗議に対抗して、言論と結社の自由を制限する多くの対策を取ってきた。今回の判決で、クレムリンはまたまた、反対意見を押さえ、合法性を否定する手段に出た。これは裏目に出そうだ。
背景情報
「プッシー・ライオット」は2月21日、モスクワの救世主ハリストス大聖堂に覆面姿で現れ、プロテストソング「マリア様、プーチンを追い出して」と歌った。歌はマリア様にフェミニストになり、プーチンを追い出してほしい、と訴えている。また、ロシア正教会の献身的なプーチン支援を批判した。これは、翌3月の大統領選を前にした、一連の反プーチン活動の一つだった。
その結果、当局はマリア・アリョーヒナとナジェージダ・トロコンニコワを3月4日に、エカテリーナ・サムツェビッチを3月15日に、逮捕した。
7月30日に審理が始まったモスクワの地区裁判所は、8日間で終わった。裁判官は被告側の証人要求をほぼ退けた。裁判は不公正ではなかったのかという懸念が残った。
今回のケースはブログ、SNS、メディアで、言論の自由、現代の非宗教的国家における教会の立場、裁判所の独立性などに関し、幅広い議論が起こった。
著名な作家、ミュージシャン、俳優ら、ロシア文化人200人が、プッシー・ライオットの3人を支持する公開書簡に署名した。書簡はラジオ局「エホ・マスクヴィ」のウエブサイトにアップされ、約4万5000の署名を集めた。
また、8月には弁護士グループが、女性3人の行動は犯罪に当たらず、起訴はロシア法に触れるとした公開書簡を送った。
「プッシー・ライオット」の話題は、海外でも幅広く取り上げられ、スティング、マドンナ、小野ヨーコ、ビョークをはじめとした多くの国際的アーティストが支援を寄せた。
とりわけ、スティングは、「バランス感覚やユーモアのセンスは、その国の、弱さではなく、強さを示しているのだ」と話していた。
アムネスティ国際配信ニュース
2012年8月17日
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