- 2012年8月17日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:日本
- トピック:女性の権利
67回目の第二次世界大戦終戦記念日にあたり、アムネスティ・インターナショナルは日本軍性奴隷制を生き延びた生存者に対して正義を与えるように、再度、日本政府に求める。
今年は、米国下院が日本政府に対して日本軍性奴隷制の生存者に対する正義を求めた決議案の採択から5周年である。この決議案では、強制された性的労働が「前例がない残虐さと規模」で組織された「20世紀で最大規模の人身売買」だと説明している。
2007年、米国の採択に加え、カナダ、オランダ、韓国、台湾、EUに加盟する27カ国からなるヨーロッパ議会などすべてが、これを決議し、日本政府に対し、女性たちに対して犯した罪の責任を認め、謝罪を要求する決議を発表した。
これらの決議と増大する国際的圧力の背景には、正義と女性への暴力に終止符を打つことを求めて、日本軍性奴隷制の問題を世界中で訴えてきた生存者の存在がある。
生存者の一人、ギル・ウォンオクは2007年、ヨーロッパに足を運び、日本政府に対し問題の解決を要求するよう、ヨーロッパ議会やオランダ議会に働きかけた。当時13歳だったギルは、工場での労働を約束されたが、連れていかれた場所は中国北東部で、そこでは「慰安婦」としての労働が待っていた。53年間のトラウマに悩まされる生活を経て1998年、彼女は沈黙を破った。ヨーロッパ、日本、オーストラリア、アメリカを回り、彼女や他の「慰安婦」生存者すべての人びとに対する正義を果たし、女性への暴力に歯止めをかけるよう要求してきた。
当時、「慰安婦」にさせられた女性のほとんどは20歳以下であった。中には、連行されたときわずか12歳という少女らもいた。日本軍は暴力や甘言を使い、成人や未成年の女性たちを連行した。生存者たちは、奴隷化の結果、身体的・心的傷害を負い、社会的孤立や恥の意識に苛まれ、多くの場合、赤貧にあえいでいるため、自らの体験を語る人はほとんどいなかった。
アジア太平洋地域の女性は、1932年ごろから第二次世界大戦終結まで、日本帝国の軍隊によって性的な奴隷とさせられた。しかしながら、今日に至るまで日本政府は明確な謝罪も、法的責任の受け入れも、日本軍性奴隷制を生き残った人びとへの十分な賠償も、してこなかった。
自由権規約委員会、拷問禁止委員会、女性差別撤廃委員会などの国連の条約機関は、日本政府に対し、組織的な「慰安婦」労働に対する謝罪、法的・道義的責任の受け入れ、十分な補償を含む社会復帰策の提供などを求めた。
2010年4月、第14回国連人権理事会がジュネーブで開催され、女性に対する暴力に関する国連特別報告者は、性犯罪被害者として生存者たちが「政府が公式に謝罪し、国として責任を公式に認めることなしに、経済的補償を受けようとは思っていない」という事実に言及した。2010年5月、訪日中だったナビ・ピレー国連人権高等弁務官は、「日本政府は、その場しのぎの対応はもう止め、戦時の性的奴隷労働の被害女性数千人に対し謝罪と救済を提供し、一挙に「慰安婦」問題を処理すべきだ」と語った。
このような国際社会の圧力にもかかわらず、日本政府は日本軍政奴隷制の生存者に対する正義を拒否してきた。あらたな補償を排除しようとする平和条約と取り決めで、賠償責任は解決済みだと主張してきた。しかしながら、日本政府が提示した賠償は、補償に関する国際基準を満たさず、生存者にとっては、口止め料にしか見えない。現在、生存者は高齢化し、多くは正義を受けることなく亡くなっている。
アムネスティ・インターナショナルは日本政府に対し、次のことを生存者に直ちに実行することを強く求める。
- 生き延びた生存者の大半が納得する方法で彼女たちが被った損害を公に認める。また法的、道義的責任を全面的に受け入れる。
- 「慰安婦」に対し、旧日本軍が犯した犯罪について全面的に、はっきりと謝罪する。
- 日本政府は、国際基準に適った十分で、かつ中身のある補償を、「慰安婦」生存者が同席する場で、直接、彼女たちに示す。
- 第2次世界大戦に関する歴史の教科書に日本軍性奴隷制度について正しく記載する。
アムネスティ・インターナショナル 声明
2012年8月15日
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