- 2012年3月27日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:死刑廃止
昨年、死刑を執行した国は、世界198ヵ国の内、わずか10%にあたる20ヵ国であった。
死刑判決や執行の対象となった犯罪は、イランの姦通や男色、パキスタンの神への冒涜、サウジアラビアの魔術、コンゴ共和国の人骨売買、10ヵ国以上での麻薬犯罪など多様だ。
死刑執行の方法は、斬首、絞首、致死薬の注射、銃殺などであった。
2011年末時点で、世界の死刑囚の総数は約18,750人であり、この1年間で少なくとも676人に死刑が執行された。しかし、これらの数字には、執行数を公表していない中国の、少なくとも数千人と見られる執行は含まれていない。さらに、イランの死刑の実態を反映していない。アムネスティは、公式に確認を得てはいないが、多数の死刑執行があったことを示す信頼すべき報告を入手している。
アムネスティのサリル・シェティ事務総長は言う。「大多数の国は死刑廃止へ向けて前進してきました。まだ死刑執行を続け、世界から孤立している少数の国々の指導者たちに対する私たちのメッセージは明確です。あなた方は世界から取り残されています。今こそ、死刑という、最も残虐で、非人道的かつ品位を傷つける刑罰を止める時です」
中東では死刑執行の件数が急激に増加しており、前年に比べおよそ50%増となっている。イラクで82件、イランで360件、サウジアラビアで82件、イエメンでは41件の執行があった。実数はいずれも上回る。これら4ヵ国で、中東全体の99%を占めている。イランとサウジアラビアを合わせた増加分だけで、各国が公表した死刑執行総数の前年比の増加数149件に匹敵する。
2011年、中国では数千人が死刑執行されており、他のすべての国々を合わせた人数よりも多い。中国では、死刑に関する数値は国家機密となっている。アムネスティは、中国の死刑数値を公的機関から入手していたが、実際の数字より大きく下回ると思われるため公表はしないこととした。アムネスティは、あらためて中国当局に死刑の判決と執行の数を公表するようことを改めて要求した。中国では過去4年間に法律や慣例の見直しにより、死刑の適用が大幅に減少した、との当局の主張を確認するためである。
アムネスティが入手した信頼すべき報告によると、イランでは多くの未確認の、あるいは秘密裏の死刑執行が多く行われており、公的に確認された数字のほぼ2倍になるものと見られる。イランでは、少なくとも3人が18歳以下の時に犯した犯罪で死刑執行されているが、これは国際法に違反する。さらに4人の未成年犯罪者が執行されたという未確認の報告がある。またサウジアラビアでも未成年者1人の執行があった。
米国は、南北アメリカ地域で唯一の、また先進8ヵ国グループの中で唯一の死刑執行国であり、2011年には43人に死刑を執行した。ヨーロッパおよび旧ソ連の国々は、2件執行があったベラルーシを除いて死刑はなかった。太平洋地域は、5人に死刑判決を言い渡したパプアニューギニア以外は、死刑の判決も執行もなかった。
ベラルーシ、日本、ベトナムでは、死刑囚は執行を事前に通告されず、家族や弁護士にも知らされない。北朝鮮、サウジアラビア、ソマリア、イランでは公開処刑が実施されている。
死刑の判決と執行が実施されている国々の大半は、裁判は公正な裁判の国際基準を満たしていない。中国、イラン、イラク、北朝鮮、サウジアラビアなどでは、拷問や監禁などで自白を強要している。
外国人は死刑の対象になりやすく、とくに中国、サウジアラビア、マレーシア、シンガポール、タイではこの傾向が顕著である。
多くの死刑執行を続けている国々においても、2011年にはいくつかの進展があった。
中国では、「ホワイトカラー」犯罪を中心に13の犯罪から死刑が除外された。さらにいくつかの改善策が、全国人民代表者会議で審議された。その中には、拘禁中の拷問を少なくすること、弁護士の役割を強化すること、重大犯罪の容疑者にも弁護士を認めることがある。
米国では、死刑の判決と執行はここ10年で大きく減少した。イリノイ州は、死刑を廃止した16番目の州となった。また、死刑の執行停止がオレゴン州で発表され、凶悪犯罪の被害者らが死刑に反対の声をあげた。
「2011年に死刑を執行した少数の国々でも、いくらかの前進が見られます。これらは小さな歩みですが、そのような改善が最後には死刑の廃止へと結びつくことになります。しかし、一夜では実現できません。私たちは死刑が過去の遺物になる日が来ることを信じています」とサリル・シェティは語った。
アムネスティは、いかなる犯罪、犯罪者、執行方法であっても、例外なく死刑に反対する。死刑は生きる権利を侵害するものであり、きわめて残虐で、非人道的かつ品位を傷つける刑罰である。
各地域の概況
南北アメリカ地域
昨年、米国はふたたび、この地域における唯一の死刑執行国となった。死刑制度を維持している34州のうち13州で計43人の死刑が執行された。これは2001年から3分の1の減少である。2011年には78人に死刑判決が下されたが、これは2001年と比較すると50%の減少であった。
カリブ海地域
死刑執行がなかった地域であり、多くの国で死刑判決が減少傾向にある。ガイアナ、セントルシア、トリニダード・トバゴの3ヵ国で合計6件の死刑判決があった。
アジア/太平洋地域
2011年、この地域では死刑の合法性を問う明らか兆候が見られた。数千件の死刑執行があったとされる中国を別にすれば、この地域では7ヵ国で少なくとも51件の執行が報告されている。18ヵ国で少なくとも833件の死刑判決が下された。他の太平洋地域では、5人の死刑判決があったパプアニューギニアを除いて死刑判決はなかった。シンガポールでは死刑執行はなく、また19年ぶりに日本でもなかった。これまでシンガポールと日本の政府は死刑制度を堅持する立場をとってきている。
アフリカ地域
2011年には著しい前進があった。ベニンでは、国連の死刑廃止条約の批准を議会が可決した。シエラレオネは死刑の執行停止を宣言した。ナイジェリアでも執行停止が確認された。ガーナの憲法審議委員会は死刑廃止を勧告した。サハラ以南地域では、ソマリア、スーダン,南スーダンで少なくとも22件の執行があった。この地域では、49ヵ国のうち14ヵ国だけが死刑を存置している。
中東/北アフリカ地域
8ヵ国で少なくとも558件の死刑執行が確認された。2011年には、15ヵ国で少なくとも750人が死刑判決を受けた。2011年、リビア、シリア、イエメンなどでは暴力行為が継続しているために、死刑に関する十分な情報を入手することはきわめて困難であった。リビアでは、死刑執行に関する情報は得られず、死刑判決も不明である。しかし、超法規的執行、拷問や恣意的拘禁が頻発している。
中東地域における全執行の99%が、イラク、イラン,サウジアラビア,イエメンの4ヵ国で行なわたものである。
アルジェリア、ヨルダン、クウェイト、レバノン、モロッコ/西サハラ、カタールで死刑判決が下されたが、執行は引き続き行なわれていない。
ヨーロッパ/中央アジア地域
ベラルーシはヨーロッパと旧ソ連における唯一の死刑執行国であり、2人の執行があった。欧州安全保障・協力機構の加盟国で死刑を執行したのは、米国とベラルーシだけだった。
アムネスティ発表国際ニュース
2012年3月27日