ペルー:フジモリ氏は直ちにペルーに戻り、虐殺などの人権侵害の責任について裁判所の審理を受けるべきである

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2007年7月11日
[日本支部声明]
国・地域:ペルー
トピック:危機にある個人
1. 重大犯罪の容疑者であるフジモリ氏が向かうべきは、日本の国会ではなく、
  ペルーの裁判所である。
2. 日本社会の、法を遵守する姿勢および、重大犯罪に立ち向かう真摯な姿勢が、
  国際社会から問われている。
3. 国民新党は、フジモリ氏の日本帰国を働きかけるなど、法の裁きを阻害する
  動きを直ちにやめるべきである。
4. 日本政府は、チリとペルーにおける司法手続きを尊重するとともに、万が一
  フジモリ氏が日本国内に入国した際には、ペルー政府に引き渡すべきである。

■2007年6月28日、アルベルト・フジモリ元ペルー大統領は、参議院議員選挙への出馬を表明した。しかし、フジモリ氏は、大統領在職中の行為により、殺人、誘拐等の重大犯罪の容疑者として、ペルーの裁判所で訴追されている身である。フジモリ氏は訴追を逃れて2000年11月に来日し、日本滞在中の間、インターポール(ICPO:国際刑事警察機構、本部パリ)やペルー司法府の逮捕要求に応じようとせず、法の適切な執行から逃げ続けた。その後フジモリ氏は、2005年11月に日本を発ってチリに入国した。現在チリの裁判所では、ペルーの身柄引渡請求を受けて、その是非を決める審理が進められている。近く判断が下される予定である。

フジモリ氏が関与したとして訴追されている事件には、ペルーの首都リマの貧困地区で共同住宅の住民15人が虐殺されたバリオス・アルトス事件(1991年)、大学構内から教員1人と学生9人が拉致され、殺害されたラ・カントゥタ事件(1992年)が含まれており、それら事件の遺族は、15年以上の間、正義を求めて悲痛な叫びを上げ続けてきた。

フジモリ氏は、立候補の抱負として、北朝鮮の拉致問題に取り組みたいと話したと報道されている。しかし、フジモリ氏自身、ペルーで拉致事件に関与したとしてペルーの裁判所から逮捕状が発付されている身である。フジモリ氏はペルーで軍と結託して上からのクーデターによって独裁制を樹立し、いったん民主制に復帰した後も、国家情報局や司法府を手先として反対派を迫害し、不正な選挙の仕組みまで整えた。また、フジモリ政権がペルー史上稀に見るほどの腐敗にまみれていたことが、氏の失脚後に明らかになっている。そんなフジモリ氏が、日本の国会議員となって日本の民主制をどうしようと言うのだろうか。
フジモリ氏は、自らが赴くべきは日本の国会ではなく、ペルーの裁判所であることを自覚すべきである。

■フジモリ氏は、クーデターで自己の大統領の座を維持し、拉致・虐殺行為を指示したとされ、司法操作を逃れて日本に逃亡した。国際社会は、そのように法を破り、犯罪を推進したとされる人権侵害の容疑者に対して、日本社会がどのように立ち向かおうとしているのか、その姿勢に注目している。

ドイツ、イタリアをはじめとする十数カ国は、フジモリ氏が自国に足を踏み入れれば身柄引渡のために氏を拘束するという意思を表明した。世界では、主要な国際人権団体(注1)はもちろんのこと、欧州連合(EU)議会(注2)やラテンアメリカ議会(注3)のような国際機関、トランスペアレンシー・インターナショナル(注4)などのNGO、国際的著名人(注5)などが、フジモリ氏の引渡と訴追をくり返し求めている。上述のラ・カントゥタ事件に関しては、昨年11月、米州人権裁判所がその判決の中で、虐殺実行部隊による犯罪は、フジモリ大統領をはじめとする政府・ 軍の上層部の認識または命令なしにはありえなかったと認定し、フジモリ氏が裁きの場にいないことが不処罰の大きな原因となっていると指摘している(注6)。また、今年6月上旬には、チリの検事が引渡審理の一環として、ペルーの引渡請求13件のうち、時効と判断した1件を除く12件で引渡が相当とする意見書を正式に提出した。その12件には、バリオス・アルトス事件とラ・カントゥタ事件も含まれている。それなのに、日本国内ではいまだに、フジモリ氏に対する訴追は根拠がないという無責任な発言がくり返されている。

■フジモリ氏が日本に滞在している間、日本の政府と国民は、ペルーにおける正義の実現にほとんど貢献できなかった。正義を求めるペルーの人々にとって、日本はその障害となっていた。チリで引渡手続きが進行している現在、日本は少なくとも、この手続きの適切な進行を妨害するような行動をとるべきではない。

しかし、国民新党の亀井静香代表代行は、7月5日に外務省で麻生外相に会い、フジモリ氏のチリからの出国を可能にするため、日本政府がチリ政府に働きかけるよう要請したと報じられている。他国の司法手続きにあからさまに介入し、人権犯罪の不処罰を助長するようなこのような動きは、国際法上も認められないし、何よりも道義的に決して許されるべきではない。

■日本政府は、チリにおけるフジモリ氏の引渡審理に関して、司法手続きを見守るという姿勢を表明している。われわれはこの姿勢を歓迎する。チリの裁判所がフジモリ氏の引渡についていかなる決定を下そうと、日本政府は公式であれ暗黙であれ、一切圧力をかけるべきではない。またわれわれ日本の市民は、そのような干渉がなされないように、日本政府の行動を引き続き見守っていかなければならない。

さらに、万が一フジモリ氏が何らかの理由でふたたび日本の地を踏むことになった場合は、ペルーの要請に応じてフジモリ氏をペルーに引き渡すべきである。責任追及を逃れて日本に逃げ込もうとするフジモリ氏に対して、日本が何度も安住の地を与えることは、決して許されてはならない。

(注1)たとえば、アムネスティ・インターナショナル、ヒューマンライツ・ウォッチ、
国際人権連盟(FIDH)など。
(注2)欧州議会決議RC-B6-0055/2006(2006年1月19日)。
(注3)ラテンアメリカ議会(Parlamento Latinoamericano)決議(2001年11月30日)。
(注4)腐敗防止を目的とする国際NGO。事務局はベルリン。
(注5)報道によれば、これまでにカーター米元大統領、ノーベル平和賞受賞者アドルフォ・ペレス=エスキベル氏(アルゼンチンの人権活動家、ノーベル平和賞受賞者)、オスカル・アリアス元コスタリカ大統領(ノーベル平和賞受賞者)、ギュンター・グラス氏(ドイツの作家、ノーベル文学賞受賞者)などが、フジモリ氏の引渡を求める書簡を送っている。
(注6)2006年11月26日のラ・カントゥタ事件に関する米州人権裁判所の判決、第96段落および第147段落。判決の全文(英語およびスペイン語)は以下のホームページからダウンロードできる。
http://www.corteidh.or.cr/casos.cfm

フジモリ氏に裁きを!日本ネットワーク
fujimoritrial@nifty.com 
構成団体:
アムネスティ・インターナショナル日本
ピースボート・ペルーキャンペーン2001
ペルーの人権問題とフジモリ元大統領の責任を考える会(関西)
ペルー民主化連帯ネットワーク(RESODEP)

<参考>
フジモリ氏に裁きを!日本ネットワーク編『フジモリ元大統領に裁きを ペルーにおける虐殺の被害者に正義を』現代人文社(GENJINブックレット41)、2004年。

フジモリ元大統領に対する国際逮捕手配書について(英語)
http://www.interpol.int/public/ICPO/PressReleases/PR2003/PR200305.asp

2007年7月11日発表

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