大人たちに徴用され、人を殺傷することを強要される子どもたち。彼らは「子ども兵士」と呼ばれます。武器の取引を規制する条約がないために、数十万人の子どもたちの未来が、奪われているのです。
「武器」は他人事じゃない
「武器」という言葉を聞いたとき、何を思い浮かべますか?
おそらく多くの方は、ナイフや銃といったものを思い浮かべると思います。実は武器には、拳銃やライフルのみならず、戦車や攻撃用のヘリコプターなども含まれます。そしてそれらは、日本に暮らす私たちには、少し遠い存在です。
しかし世界に目を向けてみると、状況はまったく異なります。世界では、戦争・紛争が絶え間なく繰り広げられています。そして今この瞬間にも、武器によって、多くの命が奪われ、かけがえのない生活が奪われているのです。
その中でも、とくに犠牲となっているのが、「子ども兵士」とよばれる子どもたちです。
子どもたちの未来が奪われていく
現在、19ヵ国で25万人以上の少年や少女が、強制的に武器をもたされ、兵士として徴用されていると言われています。
紛争下において、政府軍や武装勢力は、まだ判断能力のない子どもたちを誘拐し、監禁し、洗脳します。そして、子ども兵士として、戦闘の最前線に立たせるのです。子どもたちは、「殺人マシーン」として、利用されます。
上官の命令に逆らった子どもたちは、手足を切断されたりします。そして、兵士として役に立たなくなった彼らは、言葉通り使い捨てられ、命を落とすのです。
そのような激しい恐怖の中で、子どもたちはただ闘うことだけを強制されます。生きるためには、そうするしかないのです。
トラウマに苦しむ子どもたち
コンゴ民主共和国では、数年前まで続いていた紛争で、政府軍と反政府勢力の双方が、子ども兵士を使い続けました。その大半は、15歳未満でした。子どもたちは、前線での戦闘に加え、武器を持たない市民に対する暴力にも、加担させられたのです。
コンゴ民主共和国に暮らすベンジャミン君。彼は15歳のときに誘拐され、子ども兵士にさせられました。そして、カラシニコフ銃や拳銃の使い方を教え込まれ、実際の戦闘に何度も加わり、何人もの人を殺しました。
「ぼくは、人質にした兵士2人の腹を撃った。上官の命令だから、気にならなかった」と、ベンジャミン君はアムネスティの調査員に語っています。
幸運なことに、ベンジャミン君は兵士をやめることができました。しかし、彼は今も当時の記憶に苦しんでいます。「もう銃には近づきたくない。銃を見るのは、耐えられない」と彼は語っています。
本来であれば、鉛筆を持つべき年齢の子どもたちが、代りに銃を持たされている。これは決して、許されることではないはずです。