1月24日、ジャーナリストの青木理さんをお招きして、講演会「なぜ、死刑を止められないのか~死刑囚の再審請求にたちはだかる壁~」を開催しました。
青木理さんは、死刑をはじめ、公安警察、北朝鮮問題、国策捜査などの問題に精力的に取り組まれています。テレビ番組へのレギュラー出演もされており、ご多用の中、快く講演を引き受けてくださいました。
また、真冬の平日の夜にもかかわらず、当日は約40名の方が会場に足を運んで下さり、青木さんの講演に耳を傾けました。
日本の刑事司法制度の問題点
イベントの様子
青木理さんは、まず、日本で近年つぎつぎとえん罪事件が発覚し、無罪となり釈放されるケースもあることを紹介、それらがすべて無期懲役事件であり、死刑事件では決してえん罪が発覚しないことを指摘されました。
被疑者が犯行を否認すれば決して保釈されない現状を踏まえ、日本では、「無実の時に無実を主張するのは無謀だ」と言われるほどであること、起訴された場合の有罪率は99.7%を超えること、"最良証拠主義"によって、検察側に有利(つまり有罪)な証拠のみが裁判に提出されることをあげ、日本の捜査・裁判のありかたに疑問を投げかけました。
また、具体的な事例として袴田事件(※)のケースを紹介。有罪の証拠に疑問があることや、自白の強要があったこと、裁判が不公正であったことなど、問題点を挙げて指摘されました。
なぜ死刑事件で再審が認められないのか
続いて、話は「なぜ死刑事件で再審が認められないのか」という問題に。青木理さんは、権力側の「過去の判決を覆すことへの遠慮」、「"死の刑罰"が間違っていたと認めることへの抵抗」、「世界で死刑廃止国が着実に増えていく中で死刑制度を維持するため、死刑えん罪事件だけは絶対に認めることはできないという強い意思」などがあることを指摘。
たとえば、裁判に問題があったことが強く疑われるケースについては、執行起案書が書かれない一方で、えん罪であることが発覚する恐れがあるために執行が早まったのではないかと思われるケースもあり、そのようなところに、「何としても死刑えん罪だけは発覚させてはならない」という権力側の断固たる意思を感じると述べられました。
最後に、袴田巌さんの再審の道を開くことが死刑制度の問題についての議論の道を開くことにつながり、もしも裁判でえん罪が明らかになれば、死刑に賛成する人びとにも、この刑罰についての再考を促すことになる、と締めくくり、正義が行われるべきであるとの熱く強い思いを示されました。
※日本では、過去20年以上、死刑事件で再審が認められたケースはありません。現在、アムネスティ・インターナショナルが「危機にある個人」として認定している日本人は、袴田事件の袴田巌さんと、名張毒ぶどう酒事件の奥西勝さんのお二人で、どちらの事件も、裁判が不公正であったことが強く疑われるケースでありながら、再審が認められないまま現在に至っています。
▽日本のえん罪事件
取調べの可視化 - 日本の冤罪事件
開催日 | 2014年1月24日(金) |
開催場所 | エル大阪(大阪市) |
主催 | アムネスティ・インターナショナル日本 死刑廃止ネットワーク大阪 |